個人的にはキズもトラもあるナチュラルな革がすごく好き。 でもメーカーとしては更にきれいな革がほしい。 「革なんて汚いのが当たり前!それを隠さないのにきれいな革を作れだなんてわがまま言うな!」 ってタンナーさんに言われながら…それでもその矛盾をできる限り叶えたい。 代表:野口
<染色> 最終的な「ヘルツの5色」を決める、染色。 使う度に味わいが増すというタンニン鞣しの良さ、ナチュラルな風合いをできる限り残したい。そのために、表面をコーティングするような色付け(顔料)ではなく、透明感ある染料を薄く吹き付ける方法を採用しています。
☆染料と顔料の違い 染料:染める 元地に染み込み透ける 色付けの材料が水に溶ける 顔料:塗る 上から乗せて覆う 色付けの材料が水やアルコールに溶けない ※顔料は、革の風合いを覆い隠してしまい、せっかくの経年変化がわからなくなってしまいます
<ウェット> また、その微妙な色合いがよりきちんと革に反映されるように、ウェットと呼ばれる第一段階でのなめしは通常薄い茶色(ヌメ色)になるところ、より白い状態になるように調整されています。
☆ヌメということ ヌメというのはタンニンなめしであるということ。 タンニンでなめすと、そのタンニンの色に染まり、肌色のような雰囲気になります。 これがヌメ革と呼ばれ、このタンニンの色がヌメ色という認識が一般的です。 ヘルツの革は、タンニンなめしであるヌメ革に、染色をしている、という状態。 なのでヌメ色ではありません。
<原皮> 「生きている証なのだから、キズやトラはあって当たり前」ですが、「革は汚いもの」ですが、 何をおいてもベースの原皮には、とても気を遣ってセレクトしてもらっています。 タンナーさんからするとヘルツの要望はかなりの矛盾があり、長い時間をかけて理解を深めていきました。
<ウェット・染色> 原皮の状態では全く見えなかった模様やキズが、前述の第一なめし(ウェット)の段階で浮き上がってくることがあります。 染色した後も同様、新たに浮かび上がる模様を丁寧にチェックし、セレクトしていきます。
<最終検品> タンナーさんの仕上げと検品はもちろんのこと、ヘルツのカットチームも現地に定期的に足を運び、仕上がった革に目を通します。 なんと一枚一枚!気の遠くなる作業を経て、日本にやってくるのです。
☆ちなみに ここで使われない7000枚の革は、表面をコーティングするタイプの革を作る材料として使われるそうです。
この革で作るのは大変だよ。もっと柔らかかったら簡単に縫えるのに、とか思う。 けど、仕上がったときの、ものとしての存在感──バーンと張ったフタの佇まいやマチの力強さはこの革じゃないと出ない。 作り手:村松
<原皮> ヘルツで使う革は、成牛の中でも強度と耐久性のある「ステアハイド」。 ステアハイドは成牛の皮の代表的なもので、生後3~6ヶ月以内に去勢した2歳以上の牡成牛のことです。 成牛の皮は大判で厚く、繊維組織が比較的均一なので、強度と耐久性のある革とされています。
☆牛の成長にしたがって、若い順に「カーフ」「キップ」「カウ」「ステア」の4種類に分けられており、そのステアハイドの中でも比較的硬く厚い皮を厳選しています。 ステアハイドと対象的に、カーフやキップは柔らかく革のキメが細かいのが特徴です。
<タンニンとオイル> 革がかたすぎても、柔らかすぎても、ヘルツの鞄はその形を保つことはできません。 ちょうど良い具合になるように、タンニンの種類や配合を特別に調合して鞣してもらっています。 どんなタンニンかによって繊維の収れん率の強弱が異なり、また漬ける水温でも変化の強弱が異なるそうです。
また、堅牢な中により一層のしなやかさを生み出すのが、天然素材から抽出された「セーゴ」と呼ばれる獣脂です。フィッシュオイルの場合もあります。 ドラムにかけてじっくりと油分を調節することで程よくしっかりした存在感になります。