素材について語る!~皮革の代表!?牛革編~

素材について語る!~皮革の代表!?牛革編~
前回の本革/天然皮革編はお読みいただけましたでしょうか。まだの人は是非ご一読いただけますと嬉しいです! さて、今回は革の中でも最もポピュラーで、ヘルツのオリジナルレザーでもある「牛革」についてスポットを当てお話させていただきます。
前回の本革/天然皮革編に続いて今回もお話をしてもらうのは以下の二人です。
本店作り手 西川 普段は革の裁断を担当し、その革の検品の為、今は年間3回イタリアのタンナーへ出向きリアルな現場の空気をよく知る作り手。 「革の事に詳しくなると、モノ作りにも活かせると思ってます。」
オンラインショップスタッフ 斎藤
オンラインショップスタッフ 斎藤 公式HPのブログやSNSでの情報発信等を受け持つことも多い。個人的にレザーソムリエという資格を取得するほど革への興味が津々。 「正しい情報を得て、発信したいと思っています。それがお客さんにとって有益であれば尚嬉しいですね。」
革を見る西川
ヘルツでは「オリジナル」のレザーをイタリアのタンナーにお願いしています。現在は以下の3種類となり、また、その中で厚みを変えている革もあり、その分モノ作りの幅が広がります。
ラティーゴ

ラティーゴ

比較的銀面が滑らかで、張りのあるスムースタイプ。革の厚みによりハード、ソフトと使い分けています。 革色は定番で5色の展開(キャメル、チョコ、ブラック、グリーン、レッド)。
スターレ

スターレ

ヴォラナートと呼ばれる、革をドラムの中に入れ時間をかけ回す事で生じる自然なシボやシワが特徴となる革。表情は個体によって様々。柔らかくしなやかな革質をしている。 革色は定番で5色の展開(キャメル、チョコ、ブラック、グリーン、レッド)。
タンドーソフト

タンドーソフト

分厚い革に縮めてシワを出すシュリンク加工を施したワイルドな見た目の革。厚みはかなりありますがソフトレザーの為柔らかな質感。 革色は定番で2色の展開(キャメル、チョコ)。
HERZオリジナルレザーについて詳しく
オリジナルレザーと西川
イタリアのタンナーでは多くの原皮から状態の良いものをセレクトしてくれてるよ。質が良いとされているヨーロッパ産が主だね。 スターレはドラムを回す時間にもこだわっていて、しなやかさを出しつつ、張りも残っている状態か、検品時にちゃんと確認してるんだよ。(西川)
レザーボックス(KZ-5)エイジング例
鞣し方で言うと、ヘルツオリジナルレザーは「タンニン鞣し」。 タンニン鞣し革の特徴で日光等の光で色味が変わるエイジングがあります。写真のレザーボックス(KZ-5)を日の当たる所に置いて愛用中ですが、普段はフタをしている為、外すと色味の差が顕著に出ています。(斎藤)
グラッドストン・バッグ(P-2)エイジング例
水に濡れてしまった部分が染みになることもあります。 扱いずらい革と思われる方もいるかもしれません。しかし、ヘルツはそういった部分にも大きな魅力を感じ素材として選んでいます。使い手の味を出したり、革を育てる感覚を存分に楽しんでほしいと思っています。(斎藤)
西川と斎藤
素材としての流通量が多く、革製品として最もよく使われている牛革ですが、原料皮(原皮)としての牛皮は年齢や性別によって分けられています。

カーフ

生後6ヶ月以内の子牛。さらに生後3ヶ月以内の子牛についてはベビーカーフと呼ぶこともある。

キップ

生後6ヶ月から2年以内の子牛と成牛の中間にあたる牛。

カウ

生後2年以上で出産経験のある牝牛。

ステア

生後2年以上の去勢された牡牛。原皮の重さによってライトステア、ヘビーステアと分けられることもある。

ブル

生後3年以上の牡牛。
HERZカード
ヘルツのオリジナルレザーは主に牛革です。実は商品に付属しているカードに記載があるんですよ。 同じ牛でも年齢(月齢)や性別によって分けられています。若い方が”キメ”が細かいそうですが、年齢を重ねると”厚み”が増していきます。(斎藤)
革を出す西川
ヘルツのオリジナルレザーは厚みも何種類かあるから、主にカウ、ステア、ブルを原皮として使って革を作ってもらっているね。 特に厚みが必要な革にはブルやステア。余談だけど牡牛の方が気性が粗くて、革になっても荒々しいイメージ(笑)もちろん個体差があるから一概には言えないけどね。(西川)
丸革を広げる西川
成牛皮は大きいので様々な部位に分けられる事が多いです。西川がイタリア出張にて色々なタンナーを見た印象は、ショルダー部位の流通量が多い事。土地柄等や需要によっても違いがあるのかもしれません。

丸皮

原料皮が裁断されていない状態。小さな動物や、大きな動物でも家具用等用途によってはこのまま鞣されることもある。

半裁(サイド)

背線に沿って二分割し鞣された革。ここから腹部(ベリー)を除いたものはクロップと呼ぶ。

ネック

首にあたる部分。厚さが不均一だったり伸びたりしやすい部位。

ショルダー

肩にあたる部分。柔軟性も強度もある部分。生体時よく動いていたのでシワ等が多い。

バット・ベンズ

尻にあたる部分。厚みもあり丈夫。

ベリー

腹にあたる部分。ショルダーやバットに比べ伸びたりしやすい部位。
丸革
丸革。小さめの牛なので広げて見れました。西川はイタリアで3.5mほどの丸皮を見た事があるそう。
サイド
半裁のイメージ。用途によって半裁での取引も多くあります。
ネック
ネックはこのあたりでしょうか。首から頭の方にかけてを指します。
ショルダー、ベンズ・バット
半裁の背線に沿う分け方ではなく、両肩辺りをショルダー、お尻の方をバット等と呼ぶ。
ベリー
生きていた時の事を想像すると、ベリー(腹部)が柔らかいはもっともな気がします。
革を見る西川と斎藤
素材としての「革」にも部位等によって呼び名が付いていたりします。その中から一部ヘルツオリジナルレザーを参考にご紹介。表情に直結するものもございます。
銀面

銀面

動物の皮膚だった時、表だった側。光沢がある面のためこう呼ばれるようになった説がある。
床面

床面

動物の皮膚の内側。肉面とも言う。
コバ(木端)

コバ(木端)

革の裁断面。木の裁断面を指す言葉から革にも使うようになったとか。
シボ

シボ

革の表面にできた皺模様。スターレのようにドラムにいれ回すことでシボを出す方法もあるが、それゆえに均一ではなく自然な表情。
トラ

トラ

生体時のシワのこと。特に首や肩等よく動かしていた部位に入りやすい。虎の縞模様に似ているのでこう呼ばれています。
バラキズ

バラキズ

生体時についたキズあと。虫刺されや草木で引っ搔いたもの、喧嘩等で負ったキズが残ったもの。
血筋

血筋

血管のあと。葉脈のような見た目のものもある。
デシ数

デシ数

革の面積を示す数字。ヘルツオリジナルレザーは1枚の革に一箇所、床面に入っています。
革を見る西川
今回紹介した表情の多くは生きていた証だよね。血筋なんかはどの革にもほとんど入ってる。血管なわけだから。 トラもよく動いていた部分に出やすいんだ。イタリアではトラの事を「ルーガ」って言うんだけど、検品中「ナイス、ルーガ!」って伝えてあげると喜ぶよ笑。(西川)
ヘルツ定番5色
革の印象を大きく左右する「色」。革に色を付ける場合、大きく分ると以下の2種類に分けられます。

染料仕上げ

革の繊維を「染める」方法。アニリンという透明度の高い合成染料を使う事が多く、革の表情、自然な風合いを損なわない方法。色ムラが出来たり、キズが目立ったりするが、エイジングを楽しむことが出来る。

顔料仕上げ

革に着色剤を「乗せる」方法。透明度は低いが革のもつキズ等は目立たない。鮮やかな色が出せたり、色ムラも起きにくく、色落ちもしにくい。しかし、革を覆ってしまうので経年変化は起きにくい。
HERZカード
ヘルツのオリジナルレザーは染料仕上げ。透明度が高い為、色味も個体差は出ます。それをなるべく少なくするため、鞣し段階でのタンニン剤等を調整しています。 ナチュラルな革の雰囲気や、魅力的なエイジングを楽しめるヘルツに合った着色法です。(斎藤)
オンラインショップスタッフ 斎藤
例えば染料仕上げの革製品を明るい所に長い時間放置しておくと色褪せてしまう場合はあると思います。 放置ではなく、冷暗所等にきちんと保管してあげると次の出番の時も活躍してくれるのではないでしょうか。(斎藤)
革の表情を見る斎藤
革にとって大切な油分。多くの革は多少なり油分は含まれていると思います。革にしなやかさやツヤ、防水性を与えてくれたり。そんな油分を大きく分け、3パターンご紹介します。

セーゴ

豚や牛の獣脂と魚脂の混合油脂。黄色いペースト状をしていることが多い。一般的に広く使われている。

オイル

透明感がある。石油由来のものが多い。

ワックス

常温では固形物になるので白い色味をしている。蜜蝋の様な物。
本店作り手 西川
油分が多ければ柔軟性は増すけど、へルツの求める素材は、ある程度革に硬さが必要だよね。だからラティーゴ、スターレは例えばオルガンで扱っているイタリアンレザーに比べ油分が少な目だよ。 そういった側面からも鞄や小物に使用前、ラナパーを塗るのはおすすめだね。(西川)
様々な表情の革
革の表情や、特徴を付けるための加工も様々。その様々ある加工法でそれぞれの魅力を持った革が生まれます。ごく一部ではありますが、革の加工についてご紹介致します。

アイロンプレス

もっともよく使用される加工で、熱と圧力で表面にツヤと平滑性を与える。

ヌバック

銀面を軽くバフィングし起毛させた革。毛足は短め。バックスキン(鹿の起毛革)が名前の由来とも言われる。

スエード・ベロア

床面をバフィングし起毛させた革。ベロアよりスエードの方が毛足が短め。また、毛足を整えていない、粗い状態をラフアウトと呼んだりもします。

スクラッチ

銀面を削ったり引っかきキズ等を規則的、またはランダムに入れた革。

シュリンク

薬品等を使用し、革表面を収縮させシワやシボをつけた革。

型押し

模様のついた鉄板で革に加圧、加熱しその模様を付けた革。

ワックス(蝋引き)

ロウを塗りこんだ革。有名な革でブライドルレザーがある。ワックスの事をブルームと呼んだりもする。

プルアップ

革を折り曲げたり、圧力をかけた時に色味に差が出る表情の革。

グレージング

ツヤを出す加工のひとつで、銀面にガラスやメノウ等を擦り付け、摩擦でツヤを出す。
オンラインショップスタッフ 斎藤
革の面白いところの一つで、加工を施しまた違った表情の素材とする事があります。 よく耳にする「スエード」もそういえば革なんだな。と改めて多様性を感じます。ただ、ラティーゴのような革とスエード革とは付き合い方は全然違ってくるのかなと思います。(斎藤)
西川と斎藤
本革/天然皮革編から革の代表!?牛革編(今記事)の二部作(?)長くなってしまいましたがご覧いただき誠にありがとうございました。 革って本当に奥深くてまだまだ語りつくせない事や、僕たちも知らない事が沢山あると思います。本音を言うと(ヘルツ製品は特に)細かい事は気にしないでガンガン使い込んで、味を出していく育て方も個人的には非常に魅力を感じます(笑)。 ですが今回、記事にさせてもらったような素材の特徴を知ったりすると自分好みのエイジング(エイジングするのもタンニン鞣し革の特徴!)に育てやすかったり、トラブルに適切に対処出来たり等永く使っていく上ではプラスになると思っています。革はやっぱりちょっと手のかかる素材なので、その分愛情深く付き合ってあげたいですね。 革好きの皆さんがより良いレザーライフをおくれますように。
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