復刻品「キスリング風ザック」作り手インタビュー(NEZ編)

復刻品「キスリング風ザック」作り手インタビュー(NEZ編)

今年で、ヘルツは創業49周年。

50周年は、新しいことにどんどん挑戦していく1年にしたい。
そんな想いにつなげるため、これまでを振り返るような企画を、この1年で行っています。

 

その最たるものが、復刻品の販売

第二弾として、5月27日からキスリング風ザック(RE-2202)が販売開始しました。

復刻にあたり仕様も変わっていますが、原型の鞄を生み出したのは、大ベテランの作り手:NEZ。
現在、ヘルツに最も長く在籍している作り手です。

大ベテランの作り手:NEZ

そこで、NEZに鞄が生まれた当時の話を聞いてみました。
再現した鞄も作ってくれましたので、製作のようすも併せてどうぞ。

オンラインショップがない時代に生まれた鞄

オンラインショップがない時代に生まれた鞄

―――キスリング風ザックの原型の鞄が、誕生した経緯を教えてください。

NEZ(以下N):20年位前、今はない雑誌の企画で、ライターさんと話し合いをしながら鞄を作ることになって。「こういう風なものを作りたい」と提示されて、それをヘルツ流に作ったという感じ。

当時の日本にはない鞄を、そのライターさんが持っていて。それが面白い鞄だったのね。見たことないような、すごくでかいバッグで。それが元だけど、同じようなことはヘルツでは出来ないから。
「改良してヘルツの革で作ってみませんか」って始まったもの。

キスリング風ザック製作の様子

―――当時はそのようなこともしていたのですね。

N:そう、コラボ的なこともしていたね。雑誌の中で、通販的にヘルツの鞄を販売してくれたり、特集してくれたりしていた。そういう風な関係の中で話がきた感じ。
出版社から企画の話がきたときの窓口を、僕がやっていたんだよね。

当時はネット販売なんかしていないから、販売しているところも本店しかなくて。
買う場所としては、店か、雑誌の通販か、取引している販売店か。
(※当時は、直営店以外での卸売も行っていました。)

地方の人に売る方法が、地方の店に置いてもらうか、雑誌の通販しかなかった。自分たちで店をもっていなかったから、行き先としても、ヘルツを知ってもらうって意味でも、雑誌は大事にしていたよね。

―――スマホとかもないですもんね。時代の変化とともに、届け方が変わってきたのですね。

キスリング風ザック製作の様子2

▲多くのパーツに、手作業で穴を開けています。

大きな鞄を、ヘルツの作りで

―――ライターさんの持ってこられた大きな鞄を見ながら、型紙を作られたのですか?

N:ザっとだね。大体のサイズやポケットがあって、こんな感じでって。

もちろんその人が持ってきたものを解体するわけにはいかないし、ザックリ見た感じでスケッチ描いて、こんな感じかなってバランス見ながらサイズ出しして。

現物見てこんな感じで作ろうかなっていうのは、ヘルツ流にアレンジするわけ。ここはこうしよう、あれはこうしようって、ヘルツの持っている材料と作り方と機材で出来るようなものにして。頭の中で一回解体する作業はしたわけだ。

気をつけなきゃいけないのは、現物をあんまりつぶさに観察しちゃうと、同じものになっちゃうからね。

キスリング風ザックのスケッチ

N:このスケッチは今回作るときに、「こんな感じで作ったな」って思い出しながら描いたもの。

話は関係ないけど、いろんなバッグ作っているでしょ。
大体スケッチ描いて、スケッチがちゃんとまとまれば出来る。パースとかね、うまく取れるものが描ければ、それは作れる。あとはそれに向かって手を動かすだけだから。

キスリング風ザック製作の様子3

N:夏くらいに始めて、1月くらいまでかかったかな。

―――長い時間をかけて作ったんですね。

N:それは相手がいたからね。
その人はこんな風に実現して欲しい、でもヘルツって丈夫でなくちゃいけない、その作り方したら壊れるからダメダメ、とか。すり合わせが必要になるわけ。気持ちはわかるけど、僕が作るならそうしない、とか。

―――ヘルツがいちばん大切にしているのは、丈夫さですもんね。大変そうですね。

N:大変っていうか、やっぱり面白いよね。

外の人がヘルツをどう見ているかっていうのを、確認する機会にはなるじゃない。
自分たちだけだと発想できないことを言われたりとかさ。

作り方もなまじ知っているもんだから、そういう風にしちゃうんだけど、「こういう風にできないかなぁ」って言われるとさ、工夫が始まるじゃん。
そういうやりとりがあるから、時間はかかるけど面白い。

キスリング風ザック製作の様子4

▲蓋のパーツができました。大きい!

ライターさんは沢山いろんなことを知っているわけ。革製品じゃない世界の話を聞いたりするのも面白かったよ。
そういうのって話を聞けば、やっぱりどっかで残るでしょ、自分の中で。それが何かの拍子で「そういえば」って、新作に匂いが残ったりする場合もある。

今だとね、画像検索だとか、ネットで簡単に出てくるけど、その人を介してフィルターを通ったものがこっちにつながってきてっていうことがあるから、結構面白かった。

―――アイデアの生まれ方も、今とは違っていたのですね。

面白い鞄を、届けるために

キスリング風ザック製作の様子5

―――当時の心境としては、大変よりも、楽しかったという思いが残っていますか?

N:両方だな。笑

だってほら、売らなくちゃいけないから。自分が作ったものを自分が売るんなら、自分の責任だって言えるけど、雑誌の人たちも一緒に、売るために作っているんだから。
雑誌のページを作るのにもコストがかかっているし、ただ面白がってやればいいわけじゃない。

だから作ったわけよ、小さいやつを。

―――今回販売するために、村松が作ったものですか?

N:そう、僕がもともと、当時もそのサイズを作ったの。でかいのも作ったけど、多分売れないだろうということで、ちょっと売れそうなものも作らないと、と思って。
そんな風にして2型作ったから、時間もかかったかな。

キスリング風ザック サイズ比較

―――今回の「キスリング風バッグ」は、以前の小さいものと同じですか?

N:村松の方で変えている。耐久性とか作りやすさとか、当然ながらヘルツも考えが進化しているところがある。
当時の企画で作ったものは、やっぱり今のヘルツとは違う考えで作っている部分もあるから。そのへんは、今の考えの作り方にしっかり変えていると思う。

―――考えが進化するって面白いですね!

N:僕が作った大きい物は、基本的に当時の企画のまま作っている。かなり大きい物になると思うよ。耐久性が必要な部分はラティーゴ(ハードレザー)を使っているんだけど、すごく重くなりそうだったから、メインは薄い革を使っている。

ヘルツの中でも相当大きい方だと思う。
昨日革のパーツを並べてみたら、面積でいったら革1枚より大きかった。

キスリング風ザック パーツたち

▲インタビュー後、実際に広げてくれました。ラックスリュック(R-143)が小さく見えます。

―――作りで面白いところは、その大きさと使っている革が多いところですか?

N:もう革の厚さとか変えちゃっているから無理なんだけど、本来はからっぽにして、くるくるっとベルトで筒状に巻けたの。

―――えー!!今回のものは、くるくる出来ないですよね?

N:巻くために薄い革にはしなかったね。やっぱり丈夫にしなくちゃっていうのがあったんで。ちょっと巻けないかな。

キスリング風ザック製作の様子6

キスリング風ザック製作の様子7

▲あまりの大きさに、ひっくり返しも大仕事

―――今のヘルツが大事にしていることを優先したのですね。当時作ったリュックは、そのライターさんの理想に近い形で仕上がったのですか。

N:そうだね。すんごい大きいバッグ。
当時は雑誌の企画のみでの販売だったから、ヘルツの店頭には並んだことはなかったけど。
アメリカ出張に持っていってくれたんだけど、結構空港でウケたって。笑

ヘルツには普段使いできるバッグがいっぱいあるじゃない。このリュックは普段使いできる感じじゃないよね。笑
朝8時台、9時台の通勤電車乗ったら怒られる。3人分くらい場所取るんじゃない。笑

だから普段使いするっていうよりは、面白がって「何これ!」っていう人が買うような鞄だったかな。

キスリング風ザック 大きいサイズの着用

キスリング風ザック(RE-2202)には、ヘルツ流鞄の生み出し方や作り方、届け方の歴史がつまっていました。そんな背景を感じながら、手に取っていただけますと嬉しいです。
NEZが再現した「ビッグキスリング風バッグ」は、ヘルツ本店でご覧いただけますので、ぜひその大きさを見にいらしてください!

実は…「今のヘルツの考え方」で変えた部分が気になり、復刻版を製作した村松にも話を聞いてみることにしました。

そんなわけで、次回は村松編に続きます。お楽しみに。

(インタビュー・文/本店 鈴木)

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